2006年 04月 23日
誘導と接地
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┌静電誘導
電力線から通信線への誘導┤
└電磁誘導
●静電誘導:電力線の持っている電位でその周囲の空間に電界が発生し、通信線に誘導電圧が誘起される誘導現象
:送電線の高電圧によって、その付近に強い電界が生ずる結果、通信線に電圧を誘起する現象
・電圧成分を誘導源とする
・誘導電圧は雑音発生の原因となったり、人体に危害が及ぶ場合がある
↓
●誘導危険電圧:通信線に発生する誘導電圧で、人体に危険を及ぼす電圧
●常時誘導危険電圧:送電線が正常運転時に発生する誘導電圧
●異常時誘導危険電圧:直接接地方式送電線の1線地絡事故等の地絡電流により、通信回線と大地間に誘起される電圧
●常時誘導縦電圧:送電線の正常運転時に、誘導作用により通信線と大地との間に発生する数~十数Vの誘導電圧
●異常時誘導縦電圧:送電線などの事故による地絡電流により、通信線に生ずる人体や機器に損傷を与える電磁誘導
●誘導雑音電圧:通信機器の入力端子と大地とのインピーダンスにアンバランスがあり、強電流電線の高調波成分により入力端子の間に発生する電圧
・起誘導電流…送電線事故時の地絡電流、交流電鉄の漏えい電流
通信線が送電線や交流電鉄などの起誘導線路に近い場合、静電誘導による雑音発生の原因となることがある
(参考)誘導現象とその災害
「静電誘導がもたらす災害の一例をあげましょう。電界中に絶縁された導体を置くと導体に電圧が誘導発生しますが、送電線や変電所の高電圧母線からの、 これによる高電界の発生があります。」
・静電誘導は、正の電荷と負の電荷が互いに引き寄せられることにより発生する
・送電線からの静電誘導により通信線に発生する電圧Vc=Ve×C3/C2+C3 (参考)電気技術解説講座:電磁誘導障害と静電誘導障害
「送電線aと誘電体bの対地静電容量をCa,Cb,ab間の相互静電容量をCabとすれば、aの電圧Vaに対して、bの電圧Vbは、Va×Cab/Cab+Cbで表されます。」
・架空送電線に地絡故障が発生すると、地絡電流は送電線の地絡点から大地に流れ込み、地下を通って変電所のアースへ戻る。この送電線と大地とが作るループと通信線と大地とが作るループが電磁結合することにより、通信線に誘導電圧が発生する。誘導電圧は、起誘導電流が大きいほど、また、送電線と通信線の離隔距離が近いほど大きくなる。
(参考)電気技術解説講座:電磁誘導障害と静電誘導障害
「送電線に1線地絡故障が発生したときに、電磁誘導により通信線に発生する誘導電圧Vは、V=2πflK磁束
f:周波数 l:通信線の距離 K:遮蔽係数
磁束は通信線の電力線より遠ざかるほど小さくなる。」
・送電線の電流によって、その付近に磁界が生ずる結果、通信線に電圧を誘起する現象
・電流成分を誘導源とする
〔電磁誘導軽減対策〕
光ファイバケーブルの心線自身は、電磁誘導の影響は無いが、テンションメンバ等は金属導体のため誘導防止対策が必要となる
・妨害源となる送電線などと通信線との離隔距離を十分にとるためのルート変更
やむを得ずに交差する場合は、交差部をできる限り直角にする
・アルミ被誘導(誘導遮へい)ケーブルなどを使用することにより、遮へい係数を減少させる
・ケーブルの対をシールド層で囲んだケーブル構造とする
・シールド層を接地する
・接続端子函内でシールド層相互をボンドする
〔平衡対ケーブルにおける誘導雑音対策技術〕
・誘導源となるノイズ自体を遮断する
高周波成分を発生するノイズ源(ケーブル本体、接続部等)を金属箱などの遮へい体で覆う
・通信線と誘導源間の結合を小さくする
ケーブルをアルミテープや金属テープを用いて遮へいをしたり、その遮へい体を接地して遮へい体に電流が流れるようにすることにより、通信線の誘導電流を打ち消す
・LSコイル(Longitudinal current stopping coil)などにより、縦回線の電流を打ち消す
・フェライトコアなどを用いて縦回線のインピーダンスを増やして電流を流れにくくする
(参考)フェライトコア - 北川工業
「ノイズ電流が流れているケーブルにフェライトコアを取り付けることにより、フェライトコアの磁化に応じてケーブルのインピーダンスが増加し、ノイズ電流の伝播を抑えます。」
・通信機器の対地不平衡の改善
平衡対ケーブルの往復2心線について、各心線の対大地間のインピーダンスを平衡となるようにすることにより、縦電流が横電流に変換されないようにする縦電流減衰特性の良い平衡-不平衡変換トランスを用いて、雑音電流が信号に影響を及ぼさないようにする
・機械的強度を満足すること
・電流容量はシースと同程度であること
・ボンド線とシースの接続点の接触抵抗はできるだけ小さくすること
〔放送波による誘導発生〕
・放送波による通信回線への誘導妨害で、主に問題となるラジオ放送波は、一般に垂直偏波
・地表面を伝搬する過程で大地の持つ導電率の影響を受けて、電界は電波の進行方向に傾き水平成分を生ずる
・大地面上に水平に架渉された通信ケーブルにおいては、ケーブル方向の電界強度の水平成分及び垂直成分が、ケーブル長手方向に分布した誘導源として働き、心線と大地間に誘導縦電圧が生じ、回線を構成する2心線間及びそれに接続される通信機器の大地に対するインピーダンスの不平衡によって、線間への雑音電圧に変換される
〔放送波の通信への影響とその対策〕
・ラジオ放送の送信アンテナに近い通信回線に接続される電話機では、誤作動を起こしたり、ラジオ放送が受話器から聞こえるなどの現象が発生する場合がある
・ディジタル加入者回線において、伝送周波数とラジオ放送波周波数が重なる場合には、回線のSN比が低下する
・通信端末機器におけるラジオ放送波からの誘導対策として、電話機回路に音声周波数以上の高周波電圧の混入を阻止するインダクタンスを挿入したり、機器入出力部にフィルタを挿入する
〔接地〕
●接地:ケーブル、つり線、支持線等を大地と接続し、同電位とする
┌保安用接地
接地の目的(用途別)+大地帰路用接地
└基準電位用接地
●保安用接地:過電圧などから人体又は装置を保護するためのもの
├特に人体を過電圧から保護するために用いられる感電防止用接地
├通信用ケーブルの金属遮へい層の接地として用いられる誘導防止用接地
├絶縁床の高抵抗接地として用いられる静電気放電用接地
├建物などへの直撃雷を防護するための避雷針用接地
└通信線や電力線に誘導した雷サージを大地に放電するための避雷器用接地
●大地帰路用接地:信号伝送又は直流給電のために大地を帰路導体として利用するためのもの
├信号伝送のための信号帰路用接地
├電磁界放射のためのアンテナ接地
└海底ケーブル1条方式の接地として用いられる給電用接地
●基準電位用接地:信号などの基準となる電位を取るためのもの
├通信線に給電している直流48Vのプラス側導体の基準電位確保に用いられる通信用接地
└シャーシアースに用いられる信号用接地
〔接地工法〕
・材質が金属又は炭素の接地棒を大地に打ち込む方法
・複数の接地棒を打ち込み並列に接続する方法
・導線を直線状、放射線状、網目状などに埋設する方法
必要により接地抵抗を減少させるため、接地体周囲の土壌に電解質を含んだ薬剤などを注入することがある
┌雷電流が直接通信線に流入する直撃雷
雷害┤
└雷放流により生じた電磁界中に通信線があることにより発生する雷サージ(誘導雷)
・直撃雷は、架空ケーブル等への直接的な落雷によって発生するほか、地表面への落雷が付近の地下ケーブルに雷撃として加わることによっても発生する
〔通信線路の雷サージ対策〕
・雷雲下部の負電荷に誘起されて地表面上に蓄積された正電荷と雷雲下部の負電荷によって生じた強い電界により、大気が絶縁破壊すると直撃雷となる
負極性の雷:この絶縁破壊による直撃雷(負電荷が地上に落ちてくる方向なので)
正極性の雷:雷雲上部の正電荷と地表面の負電荷間で直接放電する場合
・侵入してくる雷サージを通信機器が耐え得る電流値、電圧値以下に抑える
→通信線と機器の間に避雷器、炭素避雷器、ガス入り避雷管、サイリスタ素子、酸化亜鉛バリスタ、シリコンサージ防護素子などの過電圧防護素子等を挿入して、その起電力によって通信線に生じた雷電流を大地に放流させる
それぞれの防護素子は、特性の差異、防護素子の大きさにより使い分けがされている
このときの接地電位上昇をできる限り小さくするため、加入者保安器の接地抵抗値は小さくすることが必要であるが、大地比抵抗のばらつきなどを考慮して、一般に100Ω程度以下としている
●誘導雷サージ:線路近傍に落雷した雷放電電流の電磁界によって通信線路に発生するもの
├雷が建物や木などに落ちて、付近に強い電磁界が生じ、電磁誘導によって近くの通信線等に電圧が発生する場合
└二つの雷雲間で正電荷と負電荷が放電することにより、通信線上に拘束されていた電荷が両方向に移動し、この電荷の移動がサージとなってケーブルに電圧が発生する場合
(参考)雷害の原因
・誘導雷サージによる故障防止対策:金属シース付きケーブルを使用し、金属シースを大地に接地させる
〔架空線路のボンド〕
●ボンド:ケーブル、つり線、支持線等相互を電気的に接続し、同電位とする
・架空線路のボンドは、つり線とケーブルの間、つり線相互間などを電気的に低抵抗で接続することにより、接地とともに雷害、電気的誘導などを防止する
・光ファイバケーブルは、心線が無誘導の光ファイバであるが、ボンドを取る必要がある
回避策:接続端子函内で分断されている平衡対ケーブルのアルミシース相互を低抵抗で接続し、接地しておく
・保安装置に使用されるPTCサーミスタは、通常、通信回線に用いられる電力を越えた大きな電力が加わると高抵抗になって電流を抑制し、その超過電力が無くなると元の抵抗値に戻る自復特性がある
(参考)Fundamentals of PolySwitch Overcurrent and Overtemperature Devices
「ポリスイッチはポリマ系のPTC(Positive Temperature Coefficient:正温度特性サーミスタ(自己回復ヒューズ))サーミスタで、素子温度がある温度より上昇すると、急激に抵抗値が変化するデバイスであり、その抵抗値変化は10の4乗から6乗にも達します。
ポリスイッチは、過電流や過熱により熱せられると、素子内部の温度が上昇し、抵抗値が増大して、回路電流を微少に制限する過電流・過熱保護素子です。そして電源をオフにすることにより、素子温度が下がり、元の抵抗値に戻るため、ヒューズのように交換する必要がありません。」
〔通信設備の接地〕
・接地設計及び施工に当たっては、接地予定場所の地形を考慮した埋設銅板を接地電極とする接地工法を採用しても、その接地予定場所の大地比抵抗も考慮する必要がある
・電気通信設備の接地は、通信用、保安用、避雷用、誘導対策用など、目的は様々であるが、所要接地抵抗値は、すべて異なる
・一般的な接地工法として金属接地棒が使用されるが、所定の接地抵抗を得ることが困難な場合には、ベントナイトなどを用いる方法がある
(参考)N.G.C.テクニカルワークショップ -その2-
「土壌の抵抗率が大きい場合、また2~3本の接地棒などでは小さな接地抵抗が得られない地域では、ベントナイト・硫安などを用いて、土壌の改良によって接地抵抗の低減をはかっている。」
・接地可能な場所が狭隘である場合には、電力用アースへの接続により接地を行う方法が簡便でよいので、多くの設備で採用されている
・中波放送アンテナ近傍では数十Vのコモンモード電圧が通信線に発生することがあり、これがノーマルモード電圧に変換され信号に重畳される
→ISDN回線のようなディジタル回線では、通信設備センタとユーザ間の距離が長く信号電圧レベルが低い場合、符号誤りが生じやすくなる
・静電気放電による故障は、合成繊維やプラスチック系材料の普及とともに増加している。人がじゅうたんなどの上を歩いたときに人体に蓄積される電荷が、通信機器などのきょう体に人体が触れた場合に、金属を介して通信機器に放電することにより、電子論理回路の誤動作を引き起こしたり、半導体素子の酸化被膜等の破壊を引き起こすことがある。
電力線から通信線への誘導┤
└電磁誘導
●静電誘導:電力線の持っている電位でその周囲の空間に電界が発生し、通信線に誘導電圧が誘起される誘導現象
:送電線の高電圧によって、その付近に強い電界が生ずる結果、通信線に電圧を誘起する現象
・電圧成分を誘導源とする
・誘導電圧は雑音発生の原因となったり、人体に危害が及ぶ場合がある
↓
●誘導危険電圧:通信線に発生する誘導電圧で、人体に危険を及ぼす電圧
●常時誘導危険電圧:送電線が正常運転時に発生する誘導電圧
●異常時誘導危険電圧:直接接地方式送電線の1線地絡事故等の地絡電流により、通信回線と大地間に誘起される電圧
●常時誘導縦電圧:送電線の正常運転時に、誘導作用により通信線と大地との間に発生する数~十数Vの誘導電圧
●異常時誘導縦電圧:送電線などの事故による地絡電流により、通信線に生ずる人体や機器に損傷を与える電磁誘導
●誘導雑音電圧:通信機器の入力端子と大地とのインピーダンスにアンバランスがあり、強電流電線の高調波成分により入力端子の間に発生する電圧
・起誘導電流…送電線事故時の地絡電流、交流電鉄の漏えい電流
通信線が送電線や交流電鉄などの起誘導線路に近い場合、静電誘導による雑音発生の原因となることがある
(参考)誘導現象とその災害
「静電誘導がもたらす災害の一例をあげましょう。電界中に絶縁された導体を置くと導体に電圧が誘導発生しますが、送電線や変電所の高電圧母線からの、 これによる高電界の発生があります。」
・静電誘導は、正の電荷と負の電荷が互いに引き寄せられることにより発生する
・送電線からの静電誘導により通信線に発生する電圧Vc=Ve×C3/C2+C3
「送電線aと誘電体bの対地静電容量をCa,Cb,ab間の相互静電容量をCabとすれば、aの電圧Vaに対して、bの電圧Vbは、Va×Cab/Cab+Cbで表されます。」
・架空送電線に地絡故障が発生すると、地絡電流は送電線の地絡点から大地に流れ込み、地下を通って変電所のアースへ戻る。この送電線と大地とが作るループと通信線と大地とが作るループが電磁結合することにより、通信線に誘導電圧が発生する。誘導電圧は、起誘導電流が大きいほど、また、送電線と通信線の離隔距離が近いほど大きくなる。
(参考)電気技術解説講座:電磁誘導障害と静電誘導障害
「送電線に1線地絡故障が発生したときに、電磁誘導により通信線に発生する誘導電圧Vは、V=2πflK磁束
f:周波数 l:通信線の距離 K:遮蔽係数
磁束は通信線の電力線より遠ざかるほど小さくなる。」
静電結合は電圧(電界)によるもので、電磁結合は電流によるものってこと。●電磁誘導:電力線に流れる交流電流が発生する磁界による誘導現象
・送電線の電流によって、その付近に磁界が生ずる結果、通信線に電圧を誘起する現象
・電流成分を誘導源とする
〔電磁誘導軽減対策〕
光ファイバケーブルの心線自身は、電磁誘導の影響は無いが、テンションメンバ等は金属導体のため誘導防止対策が必要となる
・妨害源となる送電線などと通信線との離隔距離を十分にとるためのルート変更
やむを得ずに交差する場合は、交差部をできる限り直角にする
電線に電流が流れると磁界が発生する。この磁界(磁力線)は他の電線に当たると再び電流に変わる。・ケーブルを金属管路(誘導遮へい効果の良い地下管路)へ収容する
ということは、ピッタリと平行に走るほど影響が大きくなるので、その逆をすればいいから
①妨害源となる送電線などと通信線との離隔距離を十分にとる。
②交差部をできる限り直角にして磁力線のあたる面積を小さくする。
・アルミ被誘導(誘導遮へい)ケーブルなどを使用することにより、遮へい係数を減少させる
「遮へい係数は小さいほど遮へい効果がよい」〔通信線の誘導対策〕
遮へい係数=遮へいを施した時の誘導電圧/遮へいの無い時の誘導電圧
遮へい層の抵抗+接地抵抗
=――――――――――――――――――――――――――――――――――――――×100%
遮へい層の抵抗+接地抵抗+遮へい層内の磁束による磁気損失抵抗
+j(遮へい層内の磁束によるリアクタンス+遮へい層外の磁束によるリアクタンス)
・ケーブルの対をシールド層で囲んだケーブル構造とする
・シールド層を接地する
・接続端子函内でシールド層相互をボンドする
〔平衡対ケーブルにおける誘導雑音対策技術〕
・誘導源となるノイズ自体を遮断する
高周波成分を発生するノイズ源(ケーブル本体、接続部等)を金属箱などの遮へい体で覆う
・通信線と誘導源間の結合を小さくする
ケーブルをアルミテープや金属テープを用いて遮へいをしたり、その遮へい体を接地して遮へい体に電流が流れるようにすることにより、通信線の誘導電流を打ち消す
・LSコイル(Longitudinal current stopping coil)などにより、縦回線の電流を打ち消す
・フェライトコアなどを用いて縦回線のインピーダンスを増やして電流を流れにくくする
(参考)フェライトコア - 北川工業
「ノイズ電流が流れているケーブルにフェライトコアを取り付けることにより、フェライトコアの磁化に応じてケーブルのインピーダンスが増加し、ノイズ電流の伝播を抑えます。」
・通信機器の対地不平衡の改善
平衡対ケーブルの往復2心線について、各心線の対大地間のインピーダンスを平衡となるようにすることにより、縦電流が横電流に変換されないようにする
不平衡になると芯線A→多くは静電容量により大地→大地から芯線B→静電容量により芯線Aでループができて縦横の電流が流れ放題になる・
雑音が入らないようにシールドを施すが、一度入った雑音はアナログは消せない〔架空線路の誘導対策として接続端子函内で行うボンドに必要な条件〕
フィルタをかければ一部除去はできるけどね
・機械的強度を満足すること
・電流容量はシースと同程度であること
・ボンド線とシースの接続点の接触抵抗はできるだけ小さくすること
〔放送波による誘導発生〕
・放送波による通信回線への誘導妨害で、主に問題となるラジオ放送波は、一般に垂直偏波
・地表面を伝搬する過程で大地の持つ導電率の影響を受けて、電界は電波の進行方向に傾き水平成分を生ずる
・大地面上に水平に架渉された通信ケーブルにおいては、ケーブル方向の電界強度の水平成分及び垂直成分が、ケーブル長手方向に分布した誘導源として働き、心線と大地間に誘導縦電圧が生じ、回線を構成する2心線間及びそれに接続される通信機器の大地に対するインピーダンスの不平衡によって、線間への雑音電圧に変換される
〔放送波の通信への影響とその対策〕
・ラジオ放送の送信アンテナに近い通信回線に接続される電話機では、誤作動を起こしたり、ラジオ放送が受話器から聞こえるなどの現象が発生する場合がある
・ディジタル加入者回線において、伝送周波数とラジオ放送波周波数が重なる場合には、回線のSN比が低下する
・通信端末機器におけるラジオ放送波からの誘導対策として、電話機回路に音声周波数以上の高周波電圧の混入を阻止するインダクタンスを挿入したり、機器入出力部にフィルタを挿入する
〔接地〕
●接地:ケーブル、つり線、支持線等を大地と接続し、同電位とする
┌保安用接地
接地の目的(用途別)+大地帰路用接地
└基準電位用接地
●保安用接地:過電圧などから人体又は装置を保護するためのもの
├特に人体を過電圧から保護するために用いられる感電防止用接地
├通信用ケーブルの金属遮へい層の接地として用いられる誘導防止用接地
├絶縁床の高抵抗接地として用いられる静電気放電用接地
├建物などへの直撃雷を防護するための避雷針用接地
└通信線や電力線に誘導した雷サージを大地に放電するための避雷器用接地
●大地帰路用接地:信号伝送又は直流給電のために大地を帰路導体として利用するためのもの
├信号伝送のための信号帰路用接地
├電磁界放射のためのアンテナ接地
└海底ケーブル1条方式の接地として用いられる給電用接地
●基準電位用接地:信号などの基準となる電位を取るためのもの
├通信線に給電している直流48Vのプラス側導体の基準電位確保に用いられる通信用接地
└シャーシアースに用いられる信号用接地
〔接地工法〕
・材質が金属又は炭素の接地棒を大地に打ち込む方法
・複数の接地棒を打ち込み並列に接続する方法
・導線を直線状、放射線状、網目状などに埋設する方法
必要により接地抵抗を減少させるため、接地体周囲の土壌に電解質を含んだ薬剤などを注入することがある
┌雷電流が直接通信線に流入する直撃雷
雷害┤
└雷放流により生じた電磁界中に通信線があることにより発生する雷サージ(誘導雷)
・直撃雷は、架空ケーブル等への直接的な落雷によって発生するほか、地表面への落雷が付近の地下ケーブルに雷撃として加わることによっても発生する
〔通信線路の雷サージ対策〕
・雷雲下部の負電荷に誘起されて地表面上に蓄積された正電荷と雷雲下部の負電荷によって生じた強い電界により、大気が絶縁破壊すると直撃雷となる
負極性の雷:この絶縁破壊による直撃雷(負電荷が地上に落ちてくる方向なので)
正極性の雷:雷雲上部の正電荷と地表面の負電荷間で直接放電する場合
・侵入してくる雷サージを通信機器が耐え得る電流値、電圧値以下に抑える
→通信線と機器の間に避雷器、炭素避雷器、ガス入り避雷管、サイリスタ素子、酸化亜鉛バリスタ、シリコンサージ防護素子などの過電圧防護素子等を挿入して、その起電力によって通信線に生じた雷電流を大地に放流させる
それぞれの防護素子は、特性の差異、防護素子の大きさにより使い分けがされている
炭素避雷器→昭和の遺物(引込線とこの保安器に入ってた)・ユーザ側に設置する保安器(加入者保安器)は、通信線に雷サージが侵入してきたときに加入者保安器内部の避雷器が動作し、大地に電流を放電する
サイリスタ素子→整流素子(直流→交流)変換(チョッパ回路)
酸化亜鉛バリスタ→受話器部分に取り付け雷サージで大音量が発生した場合に過剰分をパスさせ、耳が痛くならないようにする
ガス入り避雷管→引込線とこの保安器に入ってるのがこれ
シリコンサージ防護素子→小型高速性能で機器の中に入ってる
このときの接地電位上昇をできる限り小さくするため、加入者保安器の接地抵抗値は小さくすることが必要であるが、大地比抵抗のばらつきなどを考慮して、一般に100Ω程度以下としている
●誘導雷サージ:線路近傍に落雷した雷放電電流の電磁界によって通信線路に発生するもの
├雷が建物や木などに落ちて、付近に強い電磁界が生じ、電磁誘導によって近くの通信線等に電圧が発生する場合
└二つの雷雲間で正電荷と負電荷が放電することにより、通信線上に拘束されていた電荷が両方向に移動し、この電荷の移動がサージとなってケーブルに電圧が発生する場合
(参考)雷害の原因
・誘導雷サージによる故障防止対策:金属シース付きケーブルを使用し、金属シースを大地に接地させる
〔架空線路のボンド〕
●ボンド:ケーブル、つり線、支持線等相互を電気的に接続し、同電位とする
・架空線路のボンドは、つり線とケーブルの間、つり線相互間などを電気的に低抵抗で接続することにより、接地とともに雷害、電気的誘導などを防止する
・光ファイバケーブルは、心線が無誘導の光ファイバであるが、ボンドを取る必要がある
電力会社の高圧線なんかがあると誘導で電圧がメッセンに発生するし、家庭からの漏電が接地からの回り込みでメッセンにくることもある。・平衡対ケーブルのアルミシースに雷サージ等の電流が侵入した場合、心線の絶縁破壊による回線故障等を引き起こす
雷撃のサージは併架してあるメタルに影響でるし、作業者が感電することもある。
接地とボンドは光ファイバでも必要だな。
光ファイバでもテンションメンバは鋼より線であり、ボンドは取ると判断し×
回避策:接続端子函内で分断されている平衡対ケーブルのアルミシース相互を低抵抗で接続し、接地しておく
・保安装置に使用されるPTCサーミスタは、通常、通信回線に用いられる電力を越えた大きな電力が加わると高抵抗になって電流を抑制し、その超過電力が無くなると元の抵抗値に戻る自復特性がある
(参考)Fundamentals of PolySwitch Overcurrent and Overtemperature Devices
「ポリスイッチはポリマ系のPTC(Positive Temperature Coefficient:正温度特性サーミスタ(自己回復ヒューズ))サーミスタで、素子温度がある温度より上昇すると、急激に抵抗値が変化するデバイスであり、その抵抗値変化は10の4乗から6乗にも達します。
ポリスイッチは、過電流や過熱により熱せられると、素子内部の温度が上昇し、抵抗値が増大して、回路電流を微少に制限する過電流・過熱保護素子です。そして電源をオフにすることにより、素子温度が下がり、元の抵抗値に戻るため、ヒューズのように交換する必要がありません。」
〔通信設備の接地〕
・接地設計及び施工に当たっては、接地予定場所の地形を考慮した埋設銅板を接地電極とする接地工法を採用しても、その接地予定場所の大地比抵抗も考慮する必要がある
・電気通信設備の接地は、通信用、保安用、避雷用、誘導対策用など、目的は様々であるが、所要接地抵抗値は、すべて異なる
・一般的な接地工法として金属接地棒が使用されるが、所定の接地抵抗を得ることが困難な場合には、ベントナイトなどを用いる方法がある
(参考)N.G.C.テクニカルワークショップ -その2-
「土壌の抵抗率が大きい場合、また2~3本の接地棒などでは小さな接地抵抗が得られない地域では、ベントナイト・硫安などを用いて、土壌の改良によって接地抵抗の低減をはかっている。」
・
電気的に接地線抵抗を除いて0Ωで繋がるんだぞ。〔電磁ノイズの性質と妨害現象〕
電力側で漏電なんかが発生したときに、もろ電気が流れるので禁止されている
昔は、電力用と通信用(及び避雷用)の接地共用が禁止されていたのは確かだ。
またTT系統配電を採る日本特有の問題もある
だが、現代的な考え方では、等電位化の観点からむしろ積極的に共用してもよい。
ただし、宅内では等電位化母線の設置や、ビル内ではインテグレーテッド接地方式の採用などが共用の条件になるだろう。通信サイトや通信ビルでは、構造体接地を採用することがほとんどで、完全に接地を連接している場合が多い。
出題者がおそれたのかどうかは分からないが「狭隘である場合」「簡便でよいので」「多くの設備で採用されている」という出題条件を考慮するならかろうじて、NOと言える程度ではないかな。
・中波放送アンテナ近傍では数十Vのコモンモード電圧が通信線に発生することがあり、これがノーマルモード電圧に変換され信号に重畳される
→ISDN回線のようなディジタル回線では、通信設備センタとユーザ間の距離が長く信号電圧レベルが低い場合、符号誤りが生じやすくなる
・静電気放電による故障は、合成繊維やプラスチック系材料の普及とともに増加している。人がじゅうたんなどの上を歩いたときに人体に蓄積される電荷が、通信機器などのきょう体に人体が触れた場合に、金属を介して通信機器に放電することにより、電子論理回路の誤動作を引き起こしたり、半導体素子の酸化被膜等の破壊を引き起こすことがある。
by 9denki
| 2006-04-23 05:01
| 通信線路