2006年 04月 26日
光通信システム
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現在、光ファイバ伝送システムにおいて広く用いられている光信号の変復調方式として、光強度変調・直接検波方式がある。この場合、光伝送システムの送信系の多重変換装置において多重化された電気信号は、光強度変調により光信号に変換され、光ファイバ伝送路に送出される。
受信信号のSN比は、誤り率を一定値以下に抑えるための重要なパラメータ
線形中継装置:光-電気変換、電気-光変換を介すことを行わずに光信号を直接増幅する中継装置
・長距離大容量伝送システムに広く用いられている
(参考)10G光伝送システム
「線形中間中継装置は光信号を直接増幅する装置であり,電気段がないため,主信号内の監視制御信号の抽出・挿入が不可能である。」
〔光通信システムの構成〕
送信器―――光ファイバ――受信器
↑ 伝送路 ↑
電気/光(E/O)変換 光/電気(O/E)変換
・送信器の主要な機能
・レーザにより光を発生する発光機能 ┌直接変調
・レーザ光に情報信号を付与する変調機能┤
└外部変調
・受信器では、光の強度変化を受光素子(ホトダイオードやアバランシホトダイオード)により検出し、O/E変換が行われる
〔光ファイバ通信の変調方式〕
・光ファイバ伝送では、伝送路が十分に広帯域であり、半導体光源の電流/光出力特性に非直線性が存在することなどから、ディジタル変調が多く用いられる
・ディジタル変調方式には、2値変調と多値変調の二つの形式があり、基本的にはディジタル信号を光のONとOFFの状態に対応させて信号伝送を行う方式が多く用いられる
●強度変調方式:アナログ信号を用いて光源の光の強さを直接変化させる方式
:信号源からの入力によって発光ダイオードや半導体レーザを直接駆動して変調波を得る方式
・装置の構成が簡単であるが、伝送系、特に発光素子の非直線性の影響を受ける
→電流-光出力特性の直線性が比較的良好な発光ダイオードが使用され、変調回路にひずみ補償回路を付加して用いられる
・発光ダイオードの光出力が低いので、比較的短距離の画像伝送などに用いられている
●予変調方式:光の変調を行う前にあらかじめ電気的な変調を行うアナログ変調方式
・半導体レーザは電流-光出力特性の直線性に劣り非直線ひずみが大きくなるため、原信号であるアナログ信号をアナログパルス変調によりパルス信号に変換し、これを用いて光源を直接変調する
・長距離伝送では、一般に高出力光源である半導体レーザが使用される
●パルス符号変調(PCM):ディジタル変調方式の一つ
・パルス振幅変調における振幅値を量子化によって離散的な値に変換し、符号化によって0または1の2進符号にする
標本化:連続している波形から、その振幅値を一定周期で測定し、標本値として採取していく
量子化:標本値を符号化するために整数化し、デジタル値にする
符号化:量子化された値を1と0の符号(2進数)に対応させたパルス列に変換する
〔光中継伝送方式〕
┌3R再生中継器
中継器┤
└増幅(リシェーピング)のみを行う1R中継器…線形中継伝送に用いられる線形中継器
・3R機能:リタイミング(Retiming)、リシェーピング(Reshaping)、リジェネレーティング(Regenerating)
3R再生中継器(再生中継伝送方式) 1R中継器(線形中継伝送方式)
利・各中継区間の伝送損失を補償する ・中継器が簡単な構成で信頼性に優れる
点・波形劣化と雑音の累積を回避できる ・伝送速度や信号形式に対して柔軟な構成が可能
欠 リタイミング機能により ・光増幅器で生ずる自然放出光雑音の累積によるSN比の劣化
点 伝送速度が固定的 ・分散によって生ずる波形ひずみの累積による波形の劣化
●光ソリトン伝送:光ファイバの波長分散を非線形効果を利用して打ち消すことにより、光パルス信号の形状を変化させることなく伝送する方式
・光の屈折率の変化によって信号を伝送する方式
・受信感度が高くなり、伝送距離の延長や伝送容量を増大できる
〔光多重化〕
・波長分割多重伝送システムでは、1本の光ファイバに複数の異なる波長の光を伝搬させることにより、複数の信号を多重化している
・低クロストークかつ多チャネルの光合分波器、及び各波長を一括して増幅可能な光増幅器が実現されたことなどにより、波長分割多重伝送システムが実用化され、大容量化が可能となった
・波長分散が0付近の波長域で波長分割多重通信を行おうとすると、光ファイバの非線形効果により光信号同士が相互作用し、クロストークが発生しやすくなる
対策:1.55μm帯で適度な分散値を持たせたノンゼロ分散シフト光ファイバ
〔光ファイバ通信の波長〕
・光は電磁波の一種で、光ファイバ通信では主に1.3μm帯や1.55μm帯の赤外域の波長が用いられている
・石英系ガラス光ファイバは1.55μm帯で光損失が最小となる(0.2~0.3[dB/km]程度)が、それより長い波長域では主に赤外吸収の影響により光損失が増加する
・シングルモード光ファイバであっても、カットオフ波長より短い波長の光を伝送した場合、複数のモードを伝搬することが可能である。
カットオフ波長より短い波長の光に対してはMM型になる。
・石英系ガラス光ファイバの屈折率は、伝送する光の波長に依存しており、光の波長が長くなるほど屈折率は減少する
電子は原子核からの距離に比例したエネルギーを持っており、各エネルギー準位に存在する電子の数は物質の種類により決まっている。
自然放出:電子が励起され高エネルギー準位に持ち上げられた状態で放置しておくと、原子核に引き寄せられ、より安定した低エネルギー準位へ遷移するとき、遷移した分のエネルギーを放出する現象
自然放出光:自然放出のエネルギー放出で現れる光
誘導放出:励起された状態の電子に、そのエネルギー準位と低エネルギー準位の差分に相当するエネルギーを持つ光を入射すると、もともと低エネルギー準位へ遷移しようとしていた電子は、その光のエネルギーをいったん吸収し、低エネルギー準位へ強制的に遷移させられる現象
誘導放出光:誘導放出の際に放出される光
・誘導放出光のエネルギー>自然放出光のエネルギー
プランク定数
放出光の波長=光の速度×――――――――――――
電子が放出したエネルギー
〔発光素子の特徴〕
発光素子:電気信号→光信号に変換するもの…LED、LD
●レーザダイオード(LD)、半導体レーザ:反転分布状態にある多数の電子が、入射光をきっかけとして、一斉に入射光と一定の関係を持った周波数の光を出す誘導放出を利用して光を発生させるもの
・材料…1.3μm帯又は1.55μm帯では、インジウム、ガリウム、ヒ素、リンの四つの元素を組み合わせた化合物半導体(InGaAsP)
・構造…成分の異なる半導体 P層-活性層-N層からなる二重(ダブル)ヘテロ接合
・LEDと異なる点は、活性層の構造が光発振器の機能を有すること
・ダブルヘテロ接合構造の半導体レーザに順方向のバイアスをかけ、p→nに電流を流すと、活性層内に電子と正孔が閉じ込められ、反転分布状態が容易に形成され、光の強度が増す
・p形半導体とn形半導体との間に、それらよりも屈折率の高い活性層を挟んだ構造であり、活性層の両端は、へき開面といわれる反射面となっている
・活性層は一般にp形半導体が用いられる
・小形で高効率
・ビーム径が光ファイバのモードフィールド径に近いので、光ファイバ通信に適している
・半導体レーザの出力光を変調する方式としては、直接変調が一般的
直接変調方式:注入電流に信号を印加して、半導体レーザの光出射端面の反射率を注入電流の変化をそのまま光源の強度変化させる方法
・直接変調を行うと半導体レーザ内部で屈折率変化による周波数の変動が発生し、光ファイバ内を伝送したとき、波長分散の影響を大きく受けてしまう
→高速・長距離光ファイバ通信システムでは、外部変調器で変調をかけている(外部変調方式)
(参考)NTTエレクトロニクス株式会社 | Topics |
「電気信号を光信号に変換(変調)するには、大別して2通りの方法があります。一つは、半導体レーザ(LD)に変調信号(電気信号)を直接加えることにより、電気信号をそのまま光源の光強度に変換する直接変調方式です。他は半導体レーザからの出力光を外部で電気信号により強度変調をする外部変調方式です。前者は構成が簡単で、小型化できるという利点を持ち、後者は高速で長距離伝送を可能とする利点があります。」
・直接変調する場合、印加パルス電流がなくなった後も活性層中にキャリアが残り、パルスごとにこのキャリア蓄積が進み、ある周期で光応答に変化が起こるパターン効果を生ずる
・発光部の活性層の光導波作用により光を閉じ込め、ファブリペロー共振器といわれる2枚の反射鏡の間を共振させることにより増幅し、光を出力する
・ファブリペロー形半導体レーザの発振状態では、共振器の二つの反射鏡の間で、「反射鏡間の距離=半波長×整数」となるような波長の定在波が存在し、複数の波長の異なる光が発生する
・非直線的な電流-光出力特性を持つ
・注入電流がしきい値を超えるとレーザ発振が発生し、光の放出量が急激に大きくなる
LEDと比較して、
・変調可能帯域、発光スペクトル幅が狭い
・光出力の温度安定性が良い
・高出力な発光が可能
・特に強い波長選択性で縦モードの発生数を抑制した分布帰還形レーザダイオードなどの種類がある
・製造した半導体光源の発振波長の精密な制御は、半導体光源にペルチェ素子を取り付け、ペルチェ素子に流れる電流量を制御することにより、半導体光源の温度を調整して実現している
(参考)ペルチェ素子とは 【Peltier device】 - 意味・解説 : IT用語辞典 e-Words
「冷却効果のある電子部品の一つ。コンピュータのCPUの冷却装置などに使われている。2種類の金属の接合部に電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動するというペルチェ効果を利用した素子である。」
●分布帰還形(DFB)レーザダイオード:特定の波長のみを共振させることにより、単一縦モード発振を得られるようにしたLD
・光の増幅部である活性層の近くに波状の回折格子を作ることにより光の帰還を起こさせ、回折格子の周期(波状構造のピッチ)によってレーザ光に強い波長選択性を持たせた構造
・数Gbps程度の光伝送に使用できる
「光の帰還」「周期」「波長選択性」がキーワード(´・ω・)?
(参考)
分布帰還形レーザー
「分布帰還型レ-ザー Distribution Feedback Laser(DFB Laserと略称)
光導波路に周期構造を持たせる事による波長選択性があり、強力に発振する共振器を用いたレーザー。」
●縦モード:レーザ発振が生じた状態で形成される各種の定在波のうち、活性層両端の反射面間に形成される定在波
●横モード:共振回路の軸方向に垂直な面内の電界分布により形成される発光パターン
・横モードの制御は、レーザダイオードから光ファイバへ効率よく光を導くために重要な技術の一つであり、電極を狭隘な帯状であるストライプ構造にすることで、発光スポットを1か所に絞り、単一モード化を実現している
●発光ダイオード(LED):準位E1→E2への遷移による自然放出を利用して光を発生させるもの
・順方向にバイアス電圧を印加すると、電子と正孔が再結合し、自然放出光が放射される
・自然放出現象を利用するため、入力(励起)電流に比例した量の光が放出される
・応答速度は発光素子中の注入キャリアのライフタイムに依存しており、注入電流を切ったときに注入キャリアが消滅するまでの時間が短いほど、電流波形に対し発光波形が迅速に応答する
(参考)「発光ダイオード,LED」-ナノエレクトロニクス
「活性層には伝導帯と価電子体のそれぞれに電子と正孔の密度が高くなるという閉じこめ効果が生じる。このような状態では、電子と正孔の再結合が効率よく行われるのでホモ接合構造に比べてダブルへテロ構造は発光効率が良い。」
LED LD
構造 ダブルへテロ接合構造 ダブルへテロ接合構造
活性層 増幅発振しない 増幅発振する
電流-光出力特性 直線性 非直線的
共振回路 ない(面発光型) あり
光の放出 自然放出 誘導放出
光の放出量 入力(励起)電流に比例<電流がしきい値を超えると急大
変調可能帯域 広い < 狭い
出射される光のスペクトル幅 広い < 狭い
光出力の温度安定性 悪い < 良い
〔発光素子の発光原理〕
・半導体では原子が規則正しく配列しているため、電子は隣の原子の影響を受け、一般に、エネルギー準位の高い伝導帯と、エネルギー準位の低い価電子帯という二つの状態に分離される
●反転分布状態:「エネルギー準位の高い占有粒子(電子)の数>エネルギー準位の低い占有粒子(電子)の数」の状態
・半導体では、電流を流すことによる電子の注入により反転分布を実現している
・NA値が大きいほど発光素子との結合効率は高くなる
〔発光素子から光ファイバのコア内に光を導くための結合方法〕
・光ファイバの先端を直接近づける直接結合方式(基本ベース)
・独立したレンズを用いる個別レンズ方式
・光ファイバの先端をレンズ状にした先端レンズ方式
〔受光素子〕
┌PINフォトダイオード
受光素子:光信号→電気信号に変換するもの┤
└アバランシェフォトダイオード
●アバランシホトダイオード(APD):半導体中の衝突電離現象に基づくキャリアのなだれ増倍作用を利用した光検波器
ホトダイオード(PD)と比較して
受光感度:電子なだれ現象による光電流の内部増倍作用により、小さな入射パワーの光を検出でき、10~20dB程度良い
印加電圧:高い
雑音:電流増倍過程におけるイオン化の変動などにより、多く発生する
印加する逆電圧を大きくし電流増倍率を増大させると、出力信号が大きくなるが、全雑音電力も大きくなる
過剰雑音:増倍率自体のゆらぎによって発生する新たな雑音
・逆バイアス電圧を印加することにより、光の吸収によって生成された電子などのキャリアが電界から十分なエネルギーを得て加速され、新たにキャリアを生成する。新たに生成されたキャリアが更に新たにキャリアを生成するので、これを順次繰り返してアバランシ効果が発生し、キャリアの数がなだれのように急激に増加する
・構造が複雑
●PINホトダイオード(PIN-PD)
・構造…P型半導体-不純物密度の小さい真性半導体層(I層)-N型半導体
←応答速度や量子効率を上げるため
・逆バイアス電圧を加えてI層に電界を発生させ、信号光を照射すると、伝導帯の電子が励起され伝導電子と正孔が生成される
空乏層:p形半導体とn形半導体を接合したpn接合の接合面に存在する電子も正孔も不在となる領域
・「p側:-電圧、n側:+電圧」を印加した逆バイアス状態のpn接合部に光を照射すると、電子-正孔対が生成されて、「電子:n側領域、正孔:p側領域」へドリフトするため、これを外部に取り出すことにより入射光電力に比例した電流が得られる
(参考)PN接合 - goo Wikipedia (ウィキペディア) 記事検索
「pn接合に逆方向バイアス(n型側に正電圧)を印加すると、n型、p型領域それぞれに於いて、多数キャリア(電子と正孔)が少数キャリア(正孔と電子)の注入によって減少する。」
・材料
波長1.55μm帯では、量子効率がゲルマニウムと比較して高いインジウム・ガリウム・ヒ素の三つの元素を組み合わせた化合物半導体(InGaAs)やGe(ゲルマニウム)が使用されている
(参考)技術講座(光ファイバー)
「p型層とn型層の中間に、不純物を殆ど混ぜないi(intrinsic:真性の)層を設けています。i層には自由なキャリアがないので抵抗値が高く、内部の電気力も高くなり、相対的に空乏エリアが大きくなります。従って、入射光子の吸収効率が良く、多くのキャリアが外部電流に早く変換します。
APDの倍増係数は、吸収された光子1個に対して外部回路に流れる電子の数の統計学的平均値を表し、バイアス電圧によって変化します。バイアス電圧はAPDの降伏電圧より少し低い値を用います。バイアス電圧が高いほど出力効率は上がりますが、暗電流(吸収光子なしで生じる自由電子と正孔による電流=ノイズ)も増加することがあります。」
・ホトダイオードにおいてSN比を上げるには、暗電流を小さくする
・非常に微弱な光を検出する場合には、「熱雑音電力>>ショット雑音」となるため、熱雑音の影響が大きくなる
〔受光素子の特徴〕
┌受光した光信号を直接電気信号に変える光電効果によるもの
受光素子┤
└光エネルギーをいったん熱エネルギーに変換した後、電気信号に変える感熱効果によるもの
・光電効果を用いた検出器では、半導体に光を照射したときに生ずる電流、起電力などの変化を検出する
・受光素子で生ずる信号雑音…ショット雑音、熱雑音
ショット雑音:受光素子において、電子が時間的又は空間的に不規則に励起されるために生ずる光電流のゆらぎによって発生する雑音
・ショット雑音の発生顕著…アバランシホトダイオード>PINホトダイオード
・受光素子により検出された微弱な光電流は、検出器に接続された負荷抵抗の両端の電圧として取り出されるが、このとき抵抗体内部の自由電子などのキャリアが熱エネルギーによってランダムな運動を行うため、抵抗体内部において不規則な電圧変動により熱雑音が発生する
受信信号のSN比は、誤り率を一定値以下に抑えるための重要なパラメータ
線形中継装置:光-電気変換、電気-光変換を介すことを行わずに光信号を直接増幅する中継装置
・長距離大容量伝送システムに広く用いられている
(参考)10G光伝送システム
「線形中間中継装置は光信号を直接増幅する装置であり,電気段がないため,主信号内の監視制御信号の抽出・挿入が不可能である。」
〔光通信システムの構成〕
送信器―――光ファイバ――受信器
↑ 伝送路 ↑
電気/光(E/O)変換 光/電気(O/E)変換
・送信器の主要な機能
・レーザにより光を発生する発光機能 ┌直接変調
・レーザ光に情報信号を付与する変調機能┤
└外部変調
・受信器では、光の強度変化を受光素子(ホトダイオードやアバランシホトダイオード)により検出し、O/E変換が行われる
〔光ファイバ通信の変調方式〕
・光ファイバ伝送では、伝送路が十分に広帯域であり、半導体光源の電流/光出力特性に非直線性が存在することなどから、ディジタル変調が多く用いられる
・ディジタル変調方式には、2値変調と多値変調の二つの形式があり、基本的にはディジタル信号を光のONとOFFの状態に対応させて信号伝送を行う方式が多く用いられる
●強度変調方式:アナログ信号を用いて光源の光の強さを直接変化させる方式
:信号源からの入力によって発光ダイオードや半導体レーザを直接駆動して変調波を得る方式
・装置の構成が簡単であるが、伝送系、特に発光素子の非直線性の影響を受ける
→電流-光出力特性の直線性が比較的良好な発光ダイオードが使用され、変調回路にひずみ補償回路を付加して用いられる
・発光ダイオードの光出力が低いので、比較的短距離の画像伝送などに用いられている
●予変調方式:光の変調を行う前にあらかじめ電気的な変調を行うアナログ変調方式
・半導体レーザは電流-光出力特性の直線性に劣り非直線ひずみが大きくなるため、原信号であるアナログ信号をアナログパルス変調によりパルス信号に変換し、これを用いて光源を直接変調する
・長距離伝送では、一般に高出力光源である半導体レーザが使用される
●パルス符号変調(PCM):ディジタル変調方式の一つ
・パルス振幅変調における振幅値を量子化によって離散的な値に変換し、符号化によって0または1の2進符号にする
標本化:連続している波形から、その振幅値を一定周期で測定し、標本値として採取していく
量子化:標本値を符号化するために整数化し、デジタル値にする
符号化:量子化された値を1と0の符号(2進数)に対応させたパルス列に変換する
〔光中継伝送方式〕
┌3R再生中継器
中継器┤
└増幅(リシェーピング)のみを行う1R中継器…線形中継伝送に用いられる線形中継器
・3R機能:リタイミング(Retiming)、リシェーピング(Reshaping)、リジェネレーティング(Regenerating)
3R再生中継器(再生中継伝送方式) 1R中継器(線形中継伝送方式)
利・各中継区間の伝送損失を補償する ・中継器が簡単な構成で信頼性に優れる
点・波形劣化と雑音の累積を回避できる ・伝送速度や信号形式に対して柔軟な構成が可能
欠 リタイミング機能により ・光増幅器で生ずる自然放出光雑音の累積によるSN比の劣化
点 伝送速度が固定的 ・分散によって生ずる波形ひずみの累積による波形の劣化
●光ソリトン伝送:光ファイバの波長分散を非線形効果を利用して打ち消すことにより、光パルス信号の形状を変化させることなく伝送する方式
・光の屈折率の変化によって信号を伝送する方式
・受信感度が高くなり、伝送距離の延長や伝送容量を増大できる
〔光多重化〕
・波長分割多重伝送システムでは、1本の光ファイバに複数の異なる波長の光を伝搬させることにより、複数の信号を多重化している
・低クロストークかつ多チャネルの光合分波器、及び各波長を一括して増幅可能な光増幅器が実現されたことなどにより、波長分割多重伝送システムが実用化され、大容量化が可能となった
・波長分散が0付近の波長域で波長分割多重通信を行おうとすると、光ファイバの非線形効果により光信号同士が相互作用し、クロストークが発生しやすくなる
対策:1.55μm帯で適度な分散値を持たせたノンゼロ分散シフト光ファイバ
〔光ファイバ通信の波長〕
・光は電磁波の一種で、光ファイバ通信では主に1.3μm帯や1.55μm帯の赤外域の波長が用いられている
・石英系ガラス光ファイバは1.55μm帯で光損失が最小となる(0.2~0.3[dB/km]程度)が、それより長い波長域では主に赤外吸収の影響により光損失が増加する
レイリー散乱は波長の4乗に反比例するから違う。赤外線とかの吸収損失じゃね?吸収損失はガラスの主成分であるSiO2による紫外部、赤外部における固有の損失と、不純物による損失があり、波長によって特異的な変化を示す
レーリー散乱は、ファイバ製造過程で発生する材料の密度や組成の変化によって発生し、散乱は波長の4乗に逆比例
長い波長ほど散乱は急速に少なくなり、散乱は減衰の理論的下限を意味し、波長820nmでは2.5dB、1300nmでは0.2dB、 1550nmでは0.012dB
・シングルモード光ファイバであっても、カットオフ波長より短い波長の光を伝送した場合、複数のモードを伝搬することが可能である。
カットオフ波長より短い波長の光に対してはMM型になる。
・石英系ガラス光ファイバの屈折率は、伝送する光の波長に依存しており、光の波長が長くなるほど屈折率は減少する
屈折率は屈折媒質中の光の速度に対する真空中の光の速度の比であって、波長とどういう関係があるの(´・ω・)?〔発光の基本原理〕
速度と波長の関係は、
真空中30万キロ波長1mm→ある媒体に入力→15万キロに減速→波長が0.5mmになる。
いやだから波長と速度が直接どういう関連があるのかがわからん
波長が長ければ速度も速くなると考えればよいの?
そうじゃねーの?
空気から屈折率nの物質の中に光が入る場合。
空気中の光の速度c,空気中の光の周波数f,空気中の光の波長λは、入射後、それぞれ、c/n,f,λ/nとなるんじゃね?
電子は原子核からの距離に比例したエネルギーを持っており、各エネルギー準位に存在する電子の数は物質の種類により決まっている。
自然放出:電子が励起され高エネルギー準位に持ち上げられた状態で放置しておくと、原子核に引き寄せられ、より安定した低エネルギー準位へ遷移するとき、遷移した分のエネルギーを放出する現象
自然放出光:自然放出のエネルギー放出で現れる光
誘導放出:励起された状態の電子に、そのエネルギー準位と低エネルギー準位の差分に相当するエネルギーを持つ光を入射すると、もともと低エネルギー準位へ遷移しようとしていた電子は、その光のエネルギーをいったん吸収し、低エネルギー準位へ強制的に遷移させられる現象
誘導放出光:誘導放出の際に放出される光
・誘導放出光のエネルギー>自然放出光のエネルギー
プランク定数
放出光の波長=光の速度×――――――――――――
電子が放出したエネルギー
〔発光素子の特徴〕
発光素子:電気信号→光信号に変換するもの…LED、LD
●レーザダイオード(LD)、半導体レーザ:反転分布状態にある多数の電子が、入射光をきっかけとして、一斉に入射光と一定の関係を持った周波数の光を出す誘導放出を利用して光を発生させるもの
・材料…1.3μm帯又は1.55μm帯では、インジウム、ガリウム、ヒ素、リンの四つの元素を組み合わせた化合物半導体(InGaAsP)
・構造…成分の異なる半導体 P層-活性層-N層からなる二重(ダブル)ヘテロ接合
・LEDと異なる点は、活性層の構造が光発振器の機能を有すること
・ダブルヘテロ接合構造の半導体レーザに順方向のバイアスをかけ、p→nに電流を流すと、活性層内に電子と正孔が閉じ込められ、反転分布状態が容易に形成され、光の強度が増す
・p形半導体とn形半導体との間に、それらよりも屈折率の高い活性層を挟んだ構造であり、活性層の両端は、へき開面といわれる反射面となっている
・活性層は一般にp形半導体が用いられる
・小形で高効率
・ビーム径が光ファイバのモードフィールド径に近いので、光ファイバ通信に適している
・半導体レーザの出力光を変調する方式としては、直接変調が一般的
直接変調方式:注入電流に信号を印加して、
・直接変調を行うと半導体レーザ内部で屈折率変化による周波数の変動が発生し、光ファイバ内を伝送したとき、波長分散の影響を大きく受けてしまう
→高速・長距離光ファイバ通信システムでは、外部変調器で変調をかけている(外部変調方式)
(参考)NTTエレクトロニクス株式会社 | Topics |
「電気信号を光信号に変換(変調)するには、大別して2通りの方法があります。一つは、半導体レーザ(LD)に変調信号(電気信号)を直接加えることにより、電気信号をそのまま光源の光強度に変換する直接変調方式です。他は半導体レーザからの出力光を外部で電気信号により強度変調をする外部変調方式です。前者は構成が簡単で、小型化できるという利点を持ち、後者は高速で長距離伝送を可能とする利点があります。」
・直接変調する場合、印加パルス電流がなくなった後も活性層中にキャリアが残り、パルスごとにこのキャリア蓄積が進み、ある周期で光応答に変化が起こるパターン効果を生ずる
・発光部の活性層の光導波作用により光を閉じ込め、ファブリペロー共振器といわれる2枚の反射鏡の間を共振させることにより増幅し、光を出力する
・ファブリペロー形半導体レーザの発振状態では、共振器の二つの反射鏡の間で、「反射鏡間の距離=半波長×整数」となるような波長の定在波が存在し、複数の波長の異なる光が発生する
・非直線的な電流-光出力特性を持つ
・注入電流がしきい値を超えるとレーザ発振が発生し、光の放出量が急激に大きくなる
LEDと比較して、
・変調可能帯域、発光スペクトル幅が狭い
・光出力の温度安定性が良い
・高出力な発光が可能
・特に強い波長選択性で縦モードの発生数を抑制した分布帰還形レーザダイオードなどの種類がある
・製造した半導体光源の発振波長の精密な制御は、半導体光源にペルチェ素子を取り付け、ペルチェ素子に流れる電流量を制御することにより、半導体光源の温度を調整して実現している
(参考)ペルチェ素子とは 【Peltier device】 - 意味・解説 : IT用語辞典 e-Words
「冷却効果のある電子部品の一つ。コンピュータのCPUの冷却装置などに使われている。2種類の金属の接合部に電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動するというペルチェ効果を利用した素子である。」
●分布帰還形(DFB)レーザダイオード:特定の波長のみを共振させることにより、単一縦モード発振を得られるようにしたLD
・光の増幅部である活性層の近くに波状の回折格子を作ることにより光の帰還を起こさせ、回折格子の周期(波状構造のピッチ)によってレーザ光に強い波長選択性を持たせた構造
・数Gbps程度の光伝送に使用できる
「光の帰還」「周期」「波長選択性」がキーワード(´・ω・)?
(参考)
分布帰還形レーザー
「分布帰還型レ-ザー Distribution Feedback Laser(DFB Laserと略称)
光導波路に周期構造を持たせる事による波長選択性があり、強力に発振する共振器を用いたレーザー。」
●縦モード:レーザ発振が生じた状態で形成される各種の定在波のうち、活性層両端の反射面間に形成される定在波
●横モード:共振回路の軸方向に垂直な面内の電界分布により形成される発光パターン
・横モードの制御は、レーザダイオードから光ファイバへ効率よく光を導くために重要な技術の一つであり、電極を狭隘な帯状であるストライプ構造にすることで、発光スポットを1か所に絞り、単一モード化を実現している
●発光ダイオード(LED):準位E1→E2への遷移による自然放出を利用して光を発生させるもの
・順方向にバイアス電圧を印加すると、電子と正孔が再結合し、自然放出光が放射される
・自然放出現象を利用するため、入力(励起)電流に比例した量の光が放出される
・応答速度は発光素子中の注入キャリアのライフタイムに依存しており、注入電流を切ったときに注入キャリアが消滅するまでの時間が短いほど、電流波形に対し発光波形が迅速に応答する
注入電流を切ってからキャリアが消滅するまでの時間が長かったらすぐに発光が切れないんだから応答が悪い(迅速でない)んでしょ。・ダブルへテロ接合構造により、発光ダイオードの再結合確率と量子効率を高めることが可能
(参考)「発光ダイオード,LED」-ナノエレクトロニクス
「活性層には伝導帯と価電子体のそれぞれに電子と正孔の密度が高くなるという閉じこめ効果が生じる。このような状態では、電子と正孔の再結合が効率よく行われるのでホモ接合構造に比べてダブルへテロ構造は発光効率が良い。」
LED LD
構造 ダブルへテロ接合構造 ダブルへテロ接合構造
活性層 増幅発振しない 増幅発振する
電流-光出力特性 直線性 非直線的
共振回路 ない(面発光型) あり
光の放出 自然放出 誘導放出
光の放出量 入力(励起)電流に比例<電流がしきい値を超えると急大
変調可能帯域 広い < 狭い
出射される光のスペクトル幅 広い < 狭い
光出力の温度安定性 悪い < 良い
〔発光素子の発光原理〕
・半導体では原子が規則正しく配列しているため、電子は隣の原子の影響を受け、一般に、エネルギー準位の高い伝導帯と、エネルギー準位の低い価電子帯という二つの状態に分離される
●反転分布状態:「エネルギー準位の高い占有粒子(電子)の数>エネルギー準位の低い占有粒子(電子)の数」の状態
・半導体では、電流を流すことによる電子の注入により反転分布を実現している
・NA値が大きいほど発光素子との結合効率は高くなる
〔発光素子から光ファイバのコア内に光を導くための結合方法〕
・光ファイバの先端を直接近づける直接結合方式(基本ベース)
・独立したレンズを用いる個別レンズ方式
・光ファイバの先端をレンズ状にした先端レンズ方式
〔受光素子〕
┌PINフォトダイオード
受光素子:光信号→電気信号に変換するもの┤
└アバランシェフォトダイオード
●アバランシホトダイオード(APD):半導体中の衝突電離現象に基づくキャリアのなだれ増倍作用を利用した光検波器
ホトダイオード(PD)と比較して
受光感度:電子なだれ現象による光電流の内部増倍作用により、小さな入射パワーの光を検出でき、10~20dB程度良い
印加電圧:高い
雑音:電流増倍過程におけるイオン化の変動などにより、多く発生する
印加する逆電圧を大きくし電流増倍率を増大させると、出力信号が大きくなるが、全雑音電力も大きくなる
過剰雑音:増倍率自体のゆらぎによって発生する新たな雑音
・逆バイアス電圧を印加することにより、光の吸収によって生成された電子などのキャリアが電界から十分なエネルギーを得て加速され、新たにキャリアを生成する。新たに生成されたキャリアが更に新たにキャリアを生成するので、これを順次繰り返してアバランシ効果が発生し、キャリアの数がなだれのように急激に増加する
・構造が複雑
●PINホトダイオード(PIN-PD)
・構造…P型半導体-不純物密度の小さい真性半導体層(I層)-N型半導体
←応答速度や量子効率を上げるため
・逆バイアス電圧を加えてI層に電界を発生させ、信号光を照射すると、伝導帯の電子が励起され伝導電子と正孔が生成される
空乏層:p形半導体とn形半導体を接合したpn接合の接合面に存在する電子も正孔も不在となる領域
・「p側:-電圧、n側:+電圧」を印加した逆バイアス状態のpn接合部に光を照射すると、電子-正孔対が生成されて、「電子:n側領域、正孔:p側領域」へドリフトするため、これを外部に取り出すことにより入射光電力に比例した電流が得られる
(参考)PN接合 - goo Wikipedia (ウィキペディア) 記事検索
「pn接合に逆方向バイアス(n型側に正電圧)を印加すると、n型、p型領域それぞれに於いて、多数キャリア(電子と正孔)が少数キャリア(正孔と電子)の注入によって減少する。」
・材料
波長1.55μm帯では、量子効率がゲルマニウムと比較して高いインジウム・ガリウム・ヒ素の三つの元素を組み合わせた化合物半導体(InGaAs)やGe(ゲルマニウム)が使用されている
(参考)技術講座(光ファイバー)
「p型層とn型層の中間に、不純物を殆ど混ぜないi(intrinsic:真性の)層を設けています。i層には自由なキャリアがないので抵抗値が高く、内部の電気力も高くなり、相対的に空乏エリアが大きくなります。従って、入射光子の吸収効率が良く、多くのキャリアが外部電流に早く変換します。
APDの倍増係数は、吸収された光子1個に対して外部回路に流れる電子の数の統計学的平均値を表し、バイアス電圧によって変化します。バイアス電圧はAPDの降伏電圧より少し低い値を用います。バイアス電圧が高いほど出力効率は上がりますが、暗電流(吸収光子なしで生じる自由電子と正孔による電流=ノイズ)も増加することがあります。」
・ホトダイオードにおいてSN比を上げるには、暗電流を小さくする
・非常に微弱な光を検出する場合には、「熱雑音電力>>ショット雑音」となるため、熱雑音の影響が大きくなる
〔受光素子の特徴〕
┌受光した光信号を直接電気信号に変える光電効果によるもの
受光素子┤
└光エネルギーをいったん熱エネルギーに変換した後、電気信号に変える感熱効果によるもの
・光電効果を用いた検出器では、半導体に光を照射したときに生ずる電流、起電力などの変化を検出する
・受光素子で生ずる信号雑音…ショット雑音、熱雑音
ショット雑音:受光素子において、電子が時間的又は空間的に不規則に励起されるために生ずる光電流のゆらぎによって発生する雑音
・ショット雑音の発生顕著…アバランシホトダイオード>PINホトダイオード
・受光素子により検出された微弱な光電流は、検出器に接続された負荷抵抗の両端の電圧として取り出されるが、このとき抵抗体内部の自由電子などのキャリアが熱エネルギーによってランダムな運動を行うため、抵抗体内部において不規則な電圧変動により熱雑音が発生する
by 9denki
| 2006-04-26 04:21
| 通信線路