2006年 01月 22日
〔光ファイバの光損失〕
┌吸収損失
┌光ファイバ固有の損失+構造不完全性による放射・散乱
光損失+曲がりによる損失 └レイリー散乱損失
| ┌光ファイバのパラメータに起因するもの
└接続損失┤
└接続方法等に起因するもの…フレネル反射損失
●吸収損失:光ファイバ材料自体によって吸収され、熱に変換される損失
├ガラスが本来持っている紫外線損失や赤外線損失による固有の吸収によるもの
└ガラス内に含まれるOH基や遷移金属イオンなどの不純物によるもの
・不純物による吸収損失の主な原因
光ファイバの開発当初→金属イオン
低損失化技術の進んだ現在→水酸イオン
しかし、OH基の混入を防ぐ製造技術の進歩によりその吸収も減少しており、内付けCVD法で製造した石英系光ファイバでは、0.94μmのピークはほとんど消失している
●放射損失:光ファイバが曲げられたとき、コアとクラッドとの境界面への光の入射角が変化し、臨界角以上の光が放射することにより生ずる損失
●レイリー散乱損失:コア中の微少な屈折率ゆらぎにより光が散乱される損失
・光ファイバは、製造時に2,000℃程度の高温から20℃程度まで冷却されるため、わずかな屈折率のゆらぎが生ずる
・レイリー散乱による光損失は、波長の4乗に反比例する
・構造分散の波長に対する変化の割合は、材料分散の変化の割合と比較して緩やか
モード分散>材料分散>構造分散
・一般に、コア及びクラッドの屈折率分布を変えることにより、構造分散を変化させ、必要な光ファイバの波長分散値を得ている
・入射光源の光強度が大き過ぎると、誘導ブリルアン散乱などの非線形散乱による光損失が生ずるため、入射光の強度には限度がある
(参考)stimulated Brillouin scattering
「誘導ブリルアン(SBS:Stimulated Brillouin Scattering):光ファイバの中で発生する非線形光学現象。あるパワー以上の光を光ファイバに入力した場合にほとんどの光信号が入射点で反射される現象」
●接続損失:光ファイバ同士を接続したとき、さまざまな要因によりミスマッチングが生じて、光パワーが放射又は反射される損失
・コア同士が完全に均一に接続されない場合は、一方のコアから出射した光の一部が他のコアに入射できず損失となる
〔この接続損失の要因〕
・端面間の間隙(フレネル反射損失が生ずる)
→高性能光コネクタ(PCコネクタ)では、フェルール及び光ファイバの端面に丸みをつけて必ず物理的に接触するように工夫されている
・コアの軸ずれ
コアが一致せずに軸ずれがある場合、光パワーの通路が合っていないので、その箇所で損失となる
・端面の不均一性
接続箇所で両方の光ファイバが一直線にならず角度を持っている場合、損失を生ずる
MM光ファイバに比べて開口数(NA)が小さいSM光ファイバは、軸の曲がり角が同じでも、この損失値は大きくなる
・間隙と軸ずれの寸法が同じ場合
→コアの軸ずれによる損失>端面間の間隙による損失
・受光素子と光ファイバの接続による結合損失<発光素子と光ファイバの接続による結合損失
●構造不完全による損失:凹凸による散乱損失
実際の光ファイバでは、様々な製造上の要因からコア、クラッドの境界面に微小な凹凸が存在する
〔光損失測定方法の種類と特徴〕
┌カットバック法
┌透過法┤
光ファイバの光損失測定法┤ └ 挿入損失法
└後方散乱法
●OTDR(後方散乱法):光ファイバに入射した光の、レイリー散乱による反射光の一部が光パルスの進行方向と逆の方向に進み、戻ってくることの原理を利用した方法
(光源)短い光パルスが得られるLD
・光ファイバで後方に反射又は散乱される光信号は微弱なため、受光されたのち平均化処理などの信号処理が施される
・後方散乱光が発生した位置までの光ファイバ長を求めることもできる
・光ファイバのコア内で発生する後方散乱光の減衰量を測定する
●透過法:光ファイバに光を入射し、入射光パワーと出射光パワーの差によって光ファイバの損失を測定する方法
・光ファイバを伝搬する光の減衰量を直接測定する
・照射した光をすべて光ファイバに入射することが困難なため、入射端における光パワーの評価方法により、カットバック法と挿入法とに分けられる
●カットバック法(切断法):入射端から1~2m程度の点で被測定光ファイバを切断し、その点における光パワーを測定し、これを入射光パワーと評価する方法
(光源)LD、LED又は分光器と組み合わせた白色光源、光パワーメータ
(測定方法)
①被測定光ファイバから出射される光パワーPout[W]を測定する
②入射端から約2mの位置で光ファイバを切断し、その位置の光パワーの測定値を光ファイバへの入射パワーPin[W]とする
(損失)α=10log(Pin/Pout)/L[dB/km]
L[km]:切断後の被測定光ファイバの長さ
・光パワーメータを使用した光損失試験では、切り分けを行わずに測定区間全体を通しての光損失測定を行った場合、各接続点の接続損失値や光ファイバ自体の損失値を個別に測定できない
・測定精度が高く、研究等に適している
●挿入損失法:光源と被測定光ファイバの間に用いた、光ファイバコード又は励振用光ファイバから出射される光を、被測定光ファイバへの入射光パワーと評価する方法
・励振用光ファイバは、被測定光ファイバがマルチモード光ファイバのとき、定常的なパワー分布の光を入射することにより測定精度を高めるために用いられる
(損失)α=10log(P0/Pout)/L[dB/km]
励振器からの出力パワー:P0[W]
被測定光ファイバからの出力光パワー:Pout[W]
光伝送路の長さ:L[km]
この測定値には、励振器と被測定光ファイバとの接続損失も含まれているが、一般にこの値を光伝送路の損失としている
(参考)JIS C 6823:光ファイバ損失試験方法
「 カットバック法は,試験光ファイバからの出力パワーと,試験光ファイバをカットバック長(たとえば2m)に切断したあとの出力パワーの差から損失を求める方法である。
挿入損失法は原理的には似ているが,非破壊で試験ができるため,現場での試験に特に適しており,主としてコネクタ化されている光ケーブルの試験に適している。また,P1を予め測定しておくことによって,温度,力のような変化する環境条件での損失変化を継続することができる事も特徴である。
OTDR法(パルス試験法)は,単方向からの測定で,光ファイバ中の異なる箇所から後方散乱する光パワーを,光ファイバの全長にわたり測定する方法である。」
(参考)光伝送損失測定方法
〔光損失試験〕
・光ファイバ自体の損失値の絶対値を正確に計測するため、あらかじめ光入射端の測定用光源における光パワーの出力レベルを補正しておく必要がある
・GI型光ファイバケーブルの光損失測定では、測定光において複数の伝搬モードが存在するので、各光のパワー分布が変動しないように、入射条件を一定にするための励振器が用いられる
●励振器:GI光ファイバの損失測定に使用し、損失試験器から入射された試験光の不要モードを除去する機器
・後方散乱法でSM形光ファイバの光損失を測定する場合、光パルス試験器と被測定光ファイバの間に励振器を接続して測定する方法がある
(励振器を使用する目的):
・励振器を挿入することにより、接続点で多数発生する高次モードを取り除き、安定した測定値を得るため
・被測定光ファイバ内に定常モード分布状態の光を入射するため、及び被測定光ファイバが実際の伝送線路として使用されたときの特性に近い状態で伝送損失を測定するため
・長さ方向の加算性、測定の再現性が向上する
・測定データにおける再現特性の良好なことを維持できる
(参考)光伝送損失測定方法
「※GI光ファイバの場合、定常モードで励振するように励振器を挿入します。SM光ファイバの場合は、高次モードが早期に減衰するため、数mのSM光ファイバを励振器とします。」
・SM形光ファイバの光損失測定では、通常の測定コードを用いた場合、接続点で多数発生する高次モードは1~2mファイバ中を進むと減衰するため、励振ファイバの機能を果たす
・GI形光ファイバの光損失測定では、通常の測定コードを用いた場合、光源と被測定光ファイバ間にGI形光ファイバとSI形光ファイバを交互に接続した励振器を挿入しなければならない。これは、この励振器を挿入することにより、接続点で多数発生する高次モードを取り除き、安定した測定値を得るためである
〔光ファイバケーブルの保守・監視〕
●光パルス試験:光ファイバに光パルスを入射して伝搬させると、コア内の微小な屈折率のゆらぎによってレイリー散乱光の一部が入射端に戻ってくる現象(後方散乱光)を利用したもの
・被測定光ファイバの屈折率が光の進行方向にわたって均一であれば、光ファイバの各点で伝搬する光に対する後方散乱光の割合は一定となるため、遠い点から戻ってくる光電力は、光ファイバの損失分だけ小さくなる
・被測定光ファイバに破断点がある場合、フレネル反射により反射光が生じ、これを観測することによって破断位置を推定することができる
・地下クロージャ内への浸水を検知する対策
・クロージャ内に設置した浸水検知モジュールが、浸水時に監視用光ファイバ心線に曲げを生じさせ、これにより発生した損失を定期的に実施しているにて検出することで、当該浸水クロージャを特定する
・光ファイバの曲げ損失は波長依存性を持つため、パルス幅などの測定条件が同一の場合、測定波長が1.65μmの方が1.55μmと比較して、ケーブル区間における曲げによる異常箇所をより正確に把握できる
←光ファイバは長い波長の光に対して曲げによる伝送損失が大きくなるという特徴がある
・一般に、パルス幅を小さく設定するほど接続損失値をより正確に測定できるが、遠距離における接続損失値の測定誤差は大きくなる
→遠距離における接続損失値をより正確に測定する方法として、光ファイバケーブルの両端から測定し、その測定値の平均値を求める方法(平均化処理)がある
(参考)446 23 光ファイバケーブル試験方法
「(イ)損失分布をS/N比を上げて測定する。パルス幅を広くします。
(ロ)距離を正確に測定する。パルス幅を狭くします。(距離分解能を上げる)」
・測定可能な損失範囲(ダイナミックレンジ)が大きいほど長距離測定が可能
・比較的遠方からのレイリー後方散乱光を検出しようとする場合、その点より近傍のレイリー後方散乱光が大きいために、測定器の電気系(増幅回路)に飽和状態が起こった場合、遠方からの微弱な信号が正常に検知できなくなる
また、フレネル反射光は、常にレイリー後方散乱光よりも信号レベルが高いので、同じような現象が生ずる
この不要なレイリー後方散乱光及びフレネル反射光の影響を取り除くために、これらが測定端に戻っているときだけ受光装置にマスクを設定して除去することで、測定しないような措置が必要となり、これらが現れる場所と大きさに応じてマスクの位置と幅を設定している
マスク:大きなフレネル反射光を取り除く機能
・光パルス試験器において、同じ光ファイバを同じ条件で測定しても、全く同じ波形にはならない。このバラツキを補正するために測定を繰り返し行い、得られたデータの平均値を用いている。
・光パルス測定器光源のショット雑音やアンプ類の熱雑音など、測定系に起因する雑音成分が含まれている
→平均化処理:これらの雑音成分を含む波形の中から、被測定光ファイバの特性を示す信号成分を可能な限り正確に取り出すため、繰り返し得られた測定データの平均値を採用する処理
・表面に細かい傷のある光ファイバ心線は、引張り応力が加わり、ある程度のひずみが発生していると、その傷が成長して突然破断する確率が高くなる
→光ファイバの長手方向に加わっている伸びひずみ分布を測定するために、レイリー散乱光における光周波数シフトの変化量のひずみ依存性を利用した光パルス試験器を用いる方法がある
・光パルス試験器から光ファイバに入射された光パルスは、後方散乱光やフレネル反射光として反射点までの距離に比例した時間を経過した後に入射点に戻ってくる
この時間×光ファイバ中の光伝搬速度=後方散乱光やフレネル反射光が発生した位置までの光ファイバ長
→この性質を利用して破断位置の測定を行うことができる
・光ファイバは、ケーブル内で撚られているためケーブル長に比較して光ファイバ長は長くなっている。したがって、ケーブル長に合わせるために光パルス試験器におけるケーブル長の設定を、光ファイバ自体のケーブル長より小さな値に設定する必要がある
・光パルス試験器の光ファイバの屈折率設定を誤ると、実際の光ファイバ長に対して光パルス試験器の表示距離に誤差が生ずる
・光パルス試験器から光ファイバに光を入射したときの測定波形において、後方散乱係数の異なる光ファイバを接続したとき、ケーブル接続点での波形の段差が上向きに現れたり、下向きに現れたり、また段差のない状態で現れたりする場合がある
この波形の段差は、接続損失と接続点前後の光ファイバのレイリー後方散乱光レベル差とが合成されたものである
●フレネル反射:光が異なった屈折率を持った物質間の表面上に入射した時、光の一部に生じる反射
・光パルス測定は、光ファイバケーブル区間のみに適用可能であり、光ファイバ増幅器が挿入されている場合、原理的に不可能である
●フレネル反射光:光ファイバのコアと異なる屈折率を有する媒体中を光が通過する場合に発生するもの
・コネクタ接続点や光ファイバの破断点といったコアと空気等の境界面で発生する
●後方散乱光:光ファイバのコア内のガラス固有の微小な屈折率の揺らぎによって発生するレイリー散乱光のうち、入射端に戻って来る光
・光ファイバ損失の長手方向の均質性を測定するときに利用される
・伝送損失や接続損失の値、あるいは光ファイバの長さを測定できる
〔光パルス試験器による接続損失の測定方法〕
・実際の測定は、一般にOTDRを用いて行われるため、OTDR法ともいわれる
・測定により観測される波形
縦軸:後方散乱光のパワーを表し、通常は対数目盛りで表示される
横軸:光パルスが入射端に戻ってくるまでの時間に相当し、光ファイバ中での光伝搬速度を乗ずることにより測定点までの距離が分かる
・光ファイバの伝送損失は、この傾きにより測定される
・光ファイバの途中に接続点や破断点等があると、その点でパルス状の反射波や段差、直線の傾きの変化を生じ、この段差の大きさを測定することにより、接続損失の程度を知ることができる 正常な光ファイバ線路設備におけるパルス試験器の表示波形
区間(e)(f)(g)の直線的な傾き:光ファイバの光損失率[dB/km]
〔光ファイバの伝送距離と伝送損失などとの関係〕
・光信号の最大伝送距離は、光ファイバの損失、SN比、分散、送信出力、伝送速度(ラインビットレート)などによって決定される
・伝送速度が大きい場合や光源の発振スペクトル幅が広い場合は、光ファイバの分散によってパルス波形が遅延ひずみを受けるため、分散による制限を考慮する必要がある
・損失面からみた最大伝送距離L[km]=(P1-P2-PJ-PM)/PL
P1[dBm]:送信側の光送信レベル(光ファイバ内への入射レベル)
P2[dBm]:受信側の最小受光レベル
PL[dBm]:光ファイバの1[km]当たりの損失
PJ[dBm]:接続損失
PM[dBm]:損失マージン
・伝送設備センタ間の区間損失(L)=所内区間損失(X)+所外区間損失(Y)
次式を満足するように損失配分をする必要があり、適用距離もこれにより算出される
L=Y+X≦許容損失(Lmax)
・伝送装置間の許容損失(L0)=伝送装置の光送出部光出力パワー-光受信部最小受光パワー
・システム固定損失(LS)=システムマージン+光源経年劣化+クラッドモード損+WDM盤損失
光ファイバ固有の損失に関係ない損失
・伝送区間の許容損失(Lmax)=伝送装置間の許容損失(L0)-システム固定損失(LS)
┌吸収損失
┌光ファイバ固有の損失+構造不完全性による放射・散乱
光損失+曲がりによる損失 └レイリー散乱損失
| ┌光ファイバのパラメータに起因するもの
└接続損失┤
└接続方法等に起因するもの…フレネル反射損失
●吸収損失:光ファイバ材料自体によって吸収され、熱に変換される損失
├ガラスが本来持っている紫外線損失や赤外線損失による固有の吸収によるもの
└ガラス内に含まれるOH基や遷移金属イオンなどの不純物によるもの
・不純物による吸収損失の主な原因
光ファイバの開発当初→金属イオン
低損失化技術の進んだ現在→水酸イオン
吸収損失は水酸イオンによるものが1.3μm、1.55μm帯では一番大きいらしい。・OH基による吸収は、波長2.8μmにピークがあるが、1.4μm、0.94μmにもピークが生ずる
しかし、OH基の混入を防ぐ製造技術の進歩によりその吸収も減少しており、内付けCVD法で製造した石英系光ファイバでは、0.94μmのピークはほとんど消失している
●放射損失:光ファイバが曲げられたとき、コアとクラッドとの境界面への光の入射角が変化し、臨界角以上の光が放射することにより生ずる損失
●レイリー散乱損失:コア中の微少な屈折率ゆらぎにより光が散乱される損失
・光ファイバは、製造時に2,000℃程度の高温から20℃程度まで冷却されるため、わずかな屈折率のゆらぎが生ずる
・レイリー散乱による光損失は、波長の4乗に反比例する
・構造分散の波長に対する変化の割合は、材料分散の変化の割合と比較して緩やか
モード分散>材料分散>構造分散
・一般に、コア及びクラッドの屈折率分布を変えることにより、構造分散を変化させ、必要な光ファイバの波長分散値を得ている
・入射光源の光強度が大き過ぎると、誘導ブリルアン散乱などの非線形散乱による光損失が生ずるため、入射光の強度には限度がある
(参考)stimulated Brillouin scattering
「誘導ブリルアン(SBS:Stimulated Brillouin Scattering):光ファイバの中で発生する非線形光学現象。あるパワー以上の光を光ファイバに入力した場合にほとんどの光信号が入射点で反射される現象」
●接続損失:光ファイバ同士を接続したとき、さまざまな要因によりミスマッチングが生じて、光パワーが放射又は反射される損失
・コア同士が完全に均一に接続されない場合は、一方のコアから出射した光の一部が他のコアに入射できず損失となる
〔この接続損失の要因〕
・端面間の間隙(フレネル反射損失が生ずる)
→高性能光コネクタ(PCコネクタ)では、フェルール及び光ファイバの端面に丸みをつけて必ず物理的に接触するように工夫されている
・コアの軸ずれ
コアが一致せずに軸ずれがある場合、光パワーの通路が合っていないので、その箇所で損失となる
・端面の不均一性
接続箇所で両方の光ファイバが一直線にならず角度を持っている場合、損失を生ずる
MM光ファイバに比べて開口数(NA)が小さいSM光ファイバは、軸の曲がり角が同じでも、この損失値は大きくなる
NA値が小さい⇒受光角が小さい⇒許容角度が小さい⇒損失が早い段階から大きくなる・MM光ファイバ同士を接続した場合でも、伝搬が可能なモード数が異なり、伝搬可能なモード数が多い光ファイバから伝搬可能なモード数が少ない光ファイバに向けて、光パワーが伝搬されるとき、高次のモードは伝搬できない
・間隙と軸ずれの寸法が同じ場合
→コアの軸ずれによる損失>端面間の間隙による損失
・受光素子と光ファイバの接続による結合損失<発光素子と光ファイバの接続による結合損失
●構造不完全による損失:凹凸による散乱損失
実際の光ファイバでは、様々な製造上の要因からコア、クラッドの境界面に微小な凹凸が存在する
〔光損失測定方法の種類と特徴〕
┌カットバック法
┌透過法┤
光ファイバの光損失測定法┤ └ 挿入損失法
└後方散乱法
●OTDR(後方散乱法):光ファイバに入射した光の、レイリー散乱による反射光の一部が光パルスの進行方向と逆の方向に進み、戻ってくることの原理を利用した方法
(光源)短い光パルスが得られるLD
・光ファイバで後方に反射又は散乱される光信号は微弱なため、受光されたのち平均化処理などの信号処理が施される
・後方散乱光が発生した位置までの光ファイバ長を求めることもできる
・光ファイバのコア内で発生する後方散乱光の減衰量を測定する
●透過法:光ファイバに光を入射し、入射光パワーと出射光パワーの差によって光ファイバの損失を測定する方法
・光ファイバを伝搬する光の減衰量を直接測定する
・照射した光をすべて光ファイバに入射することが困難なため、入射端における光パワーの評価方法により、カットバック法と挿入法とに分けられる
●カットバック法(切断法):入射端から1~2m程度の点で被測定光ファイバを切断し、その点における光パワーを測定し、これを入射光パワーと評価する方法
(光源)LD、LED又は分光器と組み合わせた白色光源、光パワーメータ
(測定方法)
①被測定光ファイバから出射される光パワーPout[W]を測定する
②入射端から約2mの位置で光ファイバを切断し、その位置の光パワーの測定値を光ファイバへの入射パワーPin[W]とする
(損失)α=10log(Pin/Pout)/L[dB/km]
L[km]:切断後の被測定光ファイバの長さ
・光パワーメータを使用した光損失試験では、切り分けを行わずに測定区間全体を通しての光損失測定を行った場合、各接続点の接続損失値や光ファイバ自体の損失値を個別に測定できない
・測定精度が高く、研究等に適している
●挿入損失法:光源と被測定光ファイバの間に用いた、光ファイバコード又は励振用光ファイバから出射される光を、被測定光ファイバへの入射光パワーと評価する方法
・励振用光ファイバは、被測定光ファイバがマルチモード光ファイバのとき、定常的なパワー分布の光を入射することにより測定精度を高めるために用いられる
(損失)α=10log(P0/Pout)/L[dB/km]
励振器からの出力パワー:P0[W]
被測定光ファイバからの出力光パワー:Pout[W]
光伝送路の長さ:L[km]
この測定値には、励振器と被測定光ファイバとの接続損失も含まれているが、一般にこの値を光伝送路の損失としている
(参考)JIS C 6823:光ファイバ損失試験方法
「 カットバック法は,試験光ファイバからの出力パワーと,試験光ファイバをカットバック長(たとえば2m)に切断したあとの出力パワーの差から損失を求める方法である。
挿入損失法は原理的には似ているが,非破壊で試験ができるため,現場での試験に特に適しており,主としてコネクタ化されている光ケーブルの試験に適している。また,P1を予め測定しておくことによって,温度,力のような変化する環境条件での損失変化を継続することができる事も特徴である。
OTDR法(パルス試験法)は,単方向からの測定で,光ファイバ中の異なる箇所から後方散乱する光パワーを,光ファイバの全長にわたり測定する方法である。」
(参考)光伝送損失測定方法
〔光損失試験〕
・光ファイバ自体の損失値の絶対値を正確に計測するため、あらかじめ光入射端の測定用光源における光パワーの出力レベルを補正しておく必要がある
・GI型光ファイバケーブルの光損失測定では、測定光において複数の伝搬モードが存在するので、各光のパワー分布が変動しないように、入射条件を一定にするための励振器が用いられる
●励振器:GI光ファイバの損失測定に使用し、損失試験器から入射された試験光の不要モードを除去する機器
・後方散乱法でSM形光ファイバの光損失を測定する場合、光パルス試験器と被測定光ファイバの間に励振器を接続して測定する方法がある
(励振器を使用する目的):
・励振器を挿入することにより、接続点で多数発生する高次モードを取り除き、安定した測定値を得るため
・被測定光ファイバ内に定常モード分布状態の光を入射するため、及び被測定光ファイバが実際の伝送線路として使用されたときの特性に近い状態で伝送損失を測定するため
・光源からGI形光ファイバに光を入射させると、複数のモードが伝播し始めるが、光源との結合方法や光源の種類によっては、伝播し得るモードにまんべんなく分配されないことがある。励振器は、その中でモード混合を十分に起こさせ、伝播モードにまんべんなく分配させるために挿入する。(励振器を使用する効果):
・GI型光ファイバでの入射光を不要なモードを除くことにより定常的モードにおいて測定を可能とするため
・長さ方向の加算性、測定の再現性が向上する
・測定データにおける再現特性の良好なことを維持できる
(参考)光伝送損失測定方法
「※GI光ファイバの場合、定常モードで励振するように励振器を挿入します。SM光ファイバの場合は、高次モードが早期に減衰するため、数mのSM光ファイバを励振器とします。」
・SM形光ファイバの光損失測定では、通常の測定コードを用いた場合、接続点で多数発生する高次モードは1~2mファイバ中を進むと減衰するため、励振ファイバの機能を果たす
・GI形光ファイバの光損失測定では、通常の測定コードを用いた場合、光源と被測定光ファイバ間にGI形光ファイバとSI形光ファイバを交互に接続した励振器を挿入しなければならない。これは、この励振器を挿入することにより、接続点で多数発生する高次モードを取り除き、安定した測定値を得るためである
〔光ファイバケーブルの保守・監視〕
●光パルス試験:光ファイバに光パルスを入射して伝搬させると、コア内の微小な屈折率のゆらぎによってレイリー散乱光の一部が入射端に戻ってくる現象(後方散乱光)を利用したもの
・被測定光ファイバの屈折率が光の進行方向にわたって均一であれば、光ファイバの各点で伝搬する光に対する後方散乱光の割合は一定となるため、遠い点から戻ってくる光電力は、光ファイバの損失分だけ小さくなる
・被測定光ファイバに破断点がある場合、フレネル反射により反射光が生じ、これを観測することによって破断位置を推定することができる
・地下クロージャ内への浸水を検知する対策
・クロージャ内に設置した浸水検知モジュールが、浸水時に監視用光ファイバ心線に曲げを生じさせ、これにより発生した損失を定期的に実施しているにて検出することで、当該浸水クロージャを特定する
・光ファイバの曲げ損失は波長依存性を持つため、パルス幅などの測定条件が同一の場合、測定波長が1.65μmの方が1.55μmと比較して、ケーブル区間における曲げによる異常箇所をより正確に把握できる
←光ファイバは長い波長の光に対して曲げによる伝送損失が大きくなるという特徴がある
・一般に、パルス幅を小さく設定するほど接続損失値をより正確に測定できるが、遠距離における接続損失値の測定誤差は大きくなる
→遠距離における接続損失値をより正確に測定する方法として、光ファイバケーブルの両端から測定し、その測定値の平均値を求める方法(平均化処理)がある
(参考)446 23 光ファイバケーブル試験方法
「(イ)損失分布をS/N比を上げて測定する。パルス幅を広くします。
(ロ)距離を正確に測定する。パルス幅を狭くします。(距離分解能を上げる)」
測定精度と測定距離は反比例する。●光パルス試験器:光ファイバに光パルスを入射したときに、レイリー散乱光のうち光ファイバの入射端に戻ってくる後方散乱光や破断点等で発生するフレネル反射光を検出し、光ファイバの光損失、接続損失や破断点の位置を測定・検出する試験器
パルス幅が小さいと、測定精度は良いが、測定距離が短くなる。
パルス幅が大きいと、測定精度は良くないが、測定距離が長くなる。
・測定可能な損失範囲(ダイナミックレンジ)が大きいほど長距離測定が可能
・比較的遠方からのレイリー後方散乱光を検出しようとする場合、その点より近傍のレイリー後方散乱光が大きいために、測定器の電気系(増幅回路)に飽和状態が起こった場合、遠方からの微弱な信号が正常に検知できなくなる
また、フレネル反射光は、常にレイリー後方散乱光よりも信号レベルが高いので、同じような現象が生ずる
この不要なレイリー後方散乱光及びフレネル反射光の影響を取り除くために、これらが測定端に戻っているときだけ受光装置にマスクを設定して除去することで、測定しないような措置が必要となり、これらが現れる場所と大きさに応じてマスクの位置と幅を設定している
マスク:大きなフレネル反射光を取り除く機能
・光パルス試験器において、同じ光ファイバを同じ条件で測定しても、全く同じ波形にはならない。このバラツキを補正するために測定を繰り返し行い、得られたデータの平均値を用いている。
・光パルス測定器光源のショット雑音やアンプ類の熱雑音など、測定系に起因する雑音成分が含まれている
→平均化処理:これらの雑音成分を含む波形の中から、被測定光ファイバの特性を示す信号成分を可能な限り正確に取り出すため、繰り返し得られた測定データの平均値を採用する処理
・表面に細かい傷のある光ファイバ心線は、引張り応力が加わり、ある程度のひずみが発生していると、その傷が成長して突然破断する確率が高くなる
→光ファイバの長手方向に加わっている伸びひずみ分布を測定するために、レイリー散乱光における光周波数シフトの変化量のひずみ依存性を利用した光パルス試験器を用いる方法がある
・光パルス試験器から光ファイバに入射された光パルスは、後方散乱光やフレネル反射光として反射点までの距離に比例した時間を経過した後に入射点に戻ってくる
この時間×光ファイバ中の光伝搬速度=後方散乱光やフレネル反射光が発生した位置までの光ファイバ長
→この性質を利用して破断位置の測定を行うことができる
・光ファイバは、ケーブル内で撚られているためケーブル長に比較して光ファイバ長は長くなっている。したがって、ケーブル長に合わせるために光パルス試験器におけるケーブル長の設定を、光ファイバ自体のケーブル長より小さな値に設定する必要がある
・光パルス試験器の光ファイバの屈折率設定を誤ると、実際の光ファイバ長に対して光パルス試験器の表示距離に誤差が生ずる
・光パルス試験器から光ファイバに光を入射したときの測定波形において、後方散乱係数の異なる光ファイバを接続したとき、ケーブル接続点での波形の段差が上向きに現れたり、下向きに現れたり、また段差のない状態で現れたりする場合がある
この波形の段差は、接続損失と接続点前後の光ファイバのレイリー後方散乱光レベル差とが合成されたものである
●フレネル反射:光が異なった屈折率を持った物質間の表面上に入射した時、光の一部に生じる反射
・光パルス測定は、
再生中継する中継器の場合は、光パルスでの測定は不可能だが、光信号をそのまま増幅する1R中継伝送なら、C-OTDRを用いて、光ファイバ増幅器を含む区間の光パルス測定ができる。〔光ファイバの途中から入射端に戻ってくる光〕
●フレネル反射光:光ファイバのコアと異なる屈折率を有する媒体中を光が通過する場合に発生するもの
・コネクタ接続点や光ファイバの破断点といったコアと空気等の境界面で発生する
●後方散乱光:光ファイバのコア内のガラス固有の微小な屈折率の揺らぎによって発生するレイリー散乱光のうち、入射端に戻って来る光
・光ファイバ損失の長手方向の均質性を測定するときに利用される
・伝送損失や接続損失の値、あるいは光ファイバの長さを測定できる
〔光パルス試験器による接続損失の測定方法〕
・実際の測定は、一般にOTDRを用いて行われるため、OTDR法ともいわれる
・測定により観測される波形
縦軸:後方散乱光のパワーを表し、通常は対数目盛りで表示される
横軸:光パルスが入射端に戻ってくるまでの時間に相当し、光ファイバ中での光伝搬速度を乗ずることにより測定点までの距離が分かる
・光ファイバの伝送損失は、この傾きにより測定される
・光ファイバの途中に接続点や破断点等があると、その点でパルス状の反射波や段差、直線の傾きの変化を生じ、この段差の大きさを測定することにより、接続損失の程度を知ることができる
区間(e)(f)(g)の直線的な傾き:光ファイバの光損失率[dB/km]
〔光ファイバの伝送距離と伝送損失などとの関係〕
・光信号の最大伝送距離は、光ファイバの損失、SN比、分散、送信出力、伝送速度(ラインビットレート)などによって決定される
・伝送速度が大きい場合や光源の発振スペクトル幅が広い場合は、光ファイバの分散によってパルス波形が遅延ひずみを受けるため、分散による制限を考慮する必要がある
・損失面からみた最大伝送距離L[km]=(P1-P2-PJ-PM)/PL
P1[dBm]:送信側の光送信レベル(光ファイバ内への入射レベル)
P2[dBm]:受信側の最小受光レベル
PL[dBm]:光ファイバの1[km]当たりの損失
PJ[dBm]:接続損失
PM[dBm]:損失マージン
・伝送設備センタ間の区間損失(L)=所内区間損失(X)+所外区間損失(Y)
次式を満足するように損失配分をする必要があり、適用距離もこれにより算出される
L=Y+X≦許容損失(Lmax)
・伝送装置間の許容損失(L0)=伝送装置の光送出部光出力パワー-光受信部最小受光パワー
・システム固定損失(LS)=システムマージン+光源経年劣化+クラッドモード損+WDM盤損失
光ファイバ固有の損失に関係ない損失
・伝送区間の許容損失(Lmax)=伝送装置間の許容損失(L0)-システム固定損失(LS)
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by 9denki
| 2006-01-22 14:08
| 通信線路